ペプチドリームの提携先であるAmolyt社が2024/5~6に実施された学会でペプチドリームから導入したAZP-3813のフェーズ1試験の結果を発表しました。
ENDO2024プレゼンテーション ENDO2024ポスター ECE2024プレゼンテーション ECE2024ポスターAZP-3813はペプチドリームとAmolyt社の戦略的共同研究を経て創製された環状ペプチドであり、2021/9にAmolyt社に導出されました。2023/6よりフェーズ1試験が開始され、順調に進捗しています。
今般の試験は健常人を対象に安全性、忍容性、PK(薬物動態)、PD(薬力学)を評価することを目的としていました。
安全性・忍容性について
すべての被験者について治療の忍容性が確認され、安全性上の懸念は見られませんでした。
PK(薬物動態)について
薬物動態試験とは、薬物投与後、血液中などでどのように濃度が変化するか調べ、薬剤の吸収・体内での分布・代謝・体外への排出などを分析する試験です。Cmax(※1)・AUC(※2)は用量依存的に増加することが確認できました。また、半減期(※3)は20~22時間であり、1日1回投与に適合する結果でした。
PD(薬力学)について
PD試験というのは、聞き慣れないかもしれませんが薬物の用量と効果との関係を調べることを目的とした試験で、今回の試験ではIGF-1という、疾患の進行に大きく関わる因子の濃度を測定しました。先端巨大症の治療の目標は、患者さんにおいて異常に産生されてしまうIGF-1濃度を正常化することで、症状を軽減し、将来の合併症を防止していくことです。PD試験では、被験者の方にAZP-3813またはプラセボ(※4)を投与し、プラセボを基準としAZP-3813群でどの程度IGF-1濃度が下がるかを測定しました。その結果、AZP-3813は用量依存的に血中IGF-1濃度を減少させることが確認できました。
これらの結果から、Amolyt社は今後、先端巨大症の患者さんを対象とする臨床試験へと進めていくことを支持する結果であったと報告しています。
フェーズ1に続く臨床試験の開始時期は未定ですが、ペプチドリームでは2025年前半までに次のステップに進むことを見込んでいます。
先端巨大症は患者さんが主要7か国で57,000人(2021年)といわれている希少疾患で、既存の治療薬ではIGF-1のコントロールが不十分な患者さんが存在すると考えられています。AZP-3813が先端巨大症の患者さんにとって新たな治療の選択肢となることを期待しています。
Cmax(※1):最高血中濃度。薬物投与後の血中濃度が最大になった値のこと。
AUC(※2):血中濃度曲線の積分値。薬物が投与後から代謝・排出されるまでにわたり、血中を循環した全体量を示す指標。
半減期(※3):ペプチドリームでは、放射性同位体が崩壊し、量が半分になる時間も「半減期」と言っていますが、今回の記事での半減期は、投与した薬剤の血中濃度が半分になる時間のことを指しています。
プラセボ(※4):薬剤と似せてあるが、薬の効果を持たないもの。今回の試験はプラセボ対照二重盲検試験として実施され、投与する医師も、投与される被験者も、AZP-3813とプラセボのどちらが投与されたかわからないようになっています。このような試験デザインをすることによって、薬剤の治療効果をより正確にみることができます。
こちらもご覧ください
2023/6/6:Amolyt Pharma社がAZP-3813のフェーズ1試験を開始しました

ペプチドリーム広報の沖本です
生命工学系の大学院を卒業後、出版社、証券会社をへて2020年にペプチドリームに入社しました。わかりやすくリリース内容や技術内容をお伝えしていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。