Evolution of
Peptide Drugs
ペプチド創薬の進化
ペプチドとは
一般的にペプチドとは、2~50個程度のアミノ酸がペプチド(アミド)結合によりつながった化合物の総称です。50個程度以上つながったものはタンパク質として定義されており、消化等の生体内反応によりタンパク質が分解され50個程度のアミノ酸のつながり以下になると、またペプチドと呼ばれます。
ペプチド:アミノ酸が2~50個程度以上結合したもの
生体内の様々な場所で多種類のペプチドが造られており、それらはホルモンや各種伝達物質として生体維持(例えば、筋肉の弛緩、血管の拡張、胃酸の分泌、自律神経の制御等々)にとって不可欠なものとして働いており、古くから研究対象とされてきました。
“ペプチド医薬品”としては、1980年代にインスリンが遺伝子組み換え技術により大腸菌もしくは酵母から製造され、糖尿病治療に使用され始め、その後も、心不全治療薬や前立腺癌治療薬としてペプチド医薬品が承認・使用されてきました。
低分子医薬品と抗体医薬品
一方で、19世紀には植物等から単離・精製されたアルカロイド類の中から、分子量が500以下の小さな“低分子医薬品”が使用され始め、1899年に現在でも使用され続けている消炎鎮痛薬アスピリンが市販されました。その後も多くの低分子医薬品が様々な形で研究開発され、一時期は医薬品市場全体の9割近くを占め、現在においても約5割を占める医薬品カテゴリーです。
また“抗体医薬品”は1980年ころから技術革新が急速に進み、1990年代にいくつかの大型新薬(レミケード、ハーセプチン、リツキサンなど)が上市され、爆発的に医薬品市場を開拓してきました。2020年代に入って、抗体医薬品は医薬品市場全体の2割強を占めるまで成長しています。
低分子医薬品と抗体医薬品は、多くの項目(活性・特異性、体内動態、血液脳関門BBB通過の可能性、経口投与への可能性、細胞内ターゲットへの可能性、製造コスト等)で顕著な違いがあり、それぞれの優れた特徴が活かせる疾患領域への開発が進められています。2000年以降は分子量が低分子医薬品より大きく、抗体医薬品より小さいペプチド医薬品と核酸医薬品が“中分子医薬品”と定義され、様々な技術革新と共に多くの製品が上市され始め、次世代創薬の中心的存在になるものと考えられています。
環状ペプチドの特徴
古典的ペプチド医薬品は、低分子・抗体と同じターゲットタンパク質に結合することを想定した場合、2つのモダリティと比較して活性・特異性などに大きな優位性はなく、さらに体内動態や経口投与の可能性が無いなどの弱点も存在します。
一方で、古典的ペプチド医薬品が有する数多くの弱点を克服可能とする“ペプチド医薬品”を創製できれば、低分子医薬品では狙うことが不可能なターゲットタンパク質への創薬が可能となり、さらに抗体医薬品でしか狙うことが出来なかったターゲットタンパク質に対して、より小さな“ペプチド医薬品”により、抗体医薬品では不可能な経口投与薬開発の可能性も生まれます。
そのような次世代型のペプチド医薬品として、ペプチドリームでは“環状ペプチド・特殊環状ペプチド”に注目しています。一般に、20残基以内のアミノ酸がリング状に連なった“環状ペプチド”は、同じ残基を有する“鎖状”のペプチドと比較して、構造のフレキシビリティーが低減されることで、活性や特異性が向上するだけでなく、生体内安定性が著しく高く、優れた体内動態を示すことが分かっています。さらに天然に存在するアミノ酸20種類だけでなく、その光学異性体や側鎖修飾を施した“非天然型アミノ酸”を組み込むことで、医薬品研究開発で必要となるあらゆる物性調整が可能となります。
ペプチドリーム独自の創薬開発プラットフォームシステム:PDPS (Peptide Discovery Platform System)(「創薬開発プラットフォームシステム(PDPS)」)において、当社が有する3,000種類以上の非天然アミノ酸をもとに、きわめて多様性の高い(10兆種類以上)特殊環状ペプチドのライブラリーを作製することが可能となっています。その結果、非常に高い確率(95%以上)でターゲットタンパク質に対して高い結合性・特異性を持つヒット化合物を見出すことが可能となり、その後に必要となるヒット化合物から臨床候補化合物への種々の最適化においてもPDPSは極めて有効であることがわかっています。
環状ペプチドの特徴
環状ペプチドの医薬品は過去20年で約20種類以上が上市されていますが、そのターゲット領域は内分泌や心血管に関する疾患や抗生物質等が中心であり、ほとんどは天然(体内のホルモンや菌類・動物・植物由来)の環状ペプチドを最適化したもの、もしくは最適化の過程で非天然アミノ酸を使用しているものです。当社は、そのようなベースとなるペプチドが存在しないターゲットに対してもペプチドの薬を開発することができることが強みであり、これにより一気にペプチド創薬の可能性が広がると考えています。